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組織における正当性の根拠

組織における正当性の根拠

今日、組織はきわめて多くの人たち、特に教育ある人たちを雇用する。当然のことながら、彼らに対し大きな権限を行使する。組織の権限とマネジメントの正統性が大きな問題となる。これは多元社会に特有の政治的な問題である。とはいえ、今日の多元社会における組織は、コミュニティそのものではないし、コミュニティたりうることもない。コミュニティの目的はそれ自身のなかにある。これに対し、組織の目的は組織自身の中にはない。成果もない。内部にあるのはコストだけである。
組織は統治体ではない。
組織の仕事は、統治ではなく機能である。その権限と権威は、社会の特定のニーズを満たすためのものである。かつての多元社会における権力と違い、その権限は社会やコミュニティには及ばない。社会やコミュニティのもつ資源全体を支配することもない。組織の領域は、特定の社会的ニーズにかぎられる。限定されてはいるが重要な仕事のために資源を支配するだけである。その能力のいかんにかかわらず、すべては限定された仕事のためである。その支配下にある資源も限定された目的のためにある。つまり組織は、自らの地位、権限、権威の根拠を伝統的な意味における正統性に置くことができない。被支配者の同意さえあれば権力がもてるわけではない。なぜならば、今日の被支配者は、支配者に完全に依存する受益者ではないからである。
成果は組織の外にある。
企業は、個人・スタッフのために存在するのではない。成果は組織の外にあり、スタッフの同意、納得、態度に影響されるだけである。病院にとってもっとも重要な利害当事者は、病院で働いている人たちではなく患者である。このことは、政府を含め、多元社会のあらゆる組織についていえる。金融政策が大蔵省職員の得になるかどうかは考慮されない。
組織は、働く者に最大限の責任を要求しなければならない。しかし、仕事の基準、仕事ぶり、成果に直接影響を与えることについては、彼らにまかせるわけにはいかない。逆に、それらのものが、彼らを支配しなければならない。何をいかに行うかは、基本的に組織の外の世界が望み、欲することによって決まる。外の世界の論理によって決まる。
新車のデザインを、働く者に投票させても意味はない。重要なことは消費者が買ってくれるということだけである。
もちろん、働く者が信頼しない組織は機能しない。組織は、そこに働く者がそれぞれのニーズを満たすようにさせなければならない。現代の組織が、そこに働く者に位置づけと役割を与えなければならないことはすでに明らかである。しかし働く者のほうも、自らのものではない目的の実現のために働かなければならない。
彼らを満足させることは、組織にとって目的でも基準でもない。そうであってはならない。組織は、組織の外の人たちを満足させ、組織の外の目的のために働き、組織の外で成果を上げる。組織がそこに働く者のためにできることは、組織自体の機能と、彼ら働く者の目的、価値、ニーズとを調和させることである。しかしその場合でも、中心は組織の機能のほうである。組織の機能が与件である。目的が与件である。それは、組織に働く者の私的な利害とは関係ない。しかも、具体的かつ限定的であって、社会、コミュニティ、一人ひとりの人間のさまざまなニーズのうち一つに的を絞ったものである。

実りによって知る

今日の組織は、集中することによってのみ成果をあげる。組織とそのマネジメントの力の基礎となりうるものは一つしかない。『成果』である。成果こそが組織にとって唯一の存在理由である。組織が権限をもち、権力を振るうことを許されうる唯一の理由である。このことは、組織それぞれの目的が何であり、成果が何であるかを知らなければならないことを意味する。われわれは、組織それぞれの目的を果たし、そこに働く人たちの能力を測定し、あるいは少なくとも評価することができなければならない。また、組織とそこに働く人たちが、自らの役割に集中すべきことを要求しなければならない。多元社会の組織にとっては、それぞれの目的に集中することが正統性の鍵になる。
それぞれの組織にとって、何が自らの目的であるかについては、いろいろな考えがありうるし、あって当然である。しかもそれは、状況、ニーズ、価値観、技術の変化によって変わっていく。同じ国の別の大学、同じ産業の別の企業、同じ医療にたずさわる別の病院など同じ世界に属していても、組織が違えば別のものであって不思議はない。しかし、いずれの組織も、自らの目的を明確に規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定の方法を具体化できるほど、より大きな成果を上げる。自らの力の基盤を成果による正統性に絞るほど、正統な存在となる。こうして、『彼らの実りによって彼らを知る』ことが、これからの組織の基本原理となる。

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