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組織が果たすべき責任

組織が果たすべき責任

責任には必ず権限が伴う。逆にいえば、権限のあるところに責任がある。したがって問題は、何が組織の社会的責任かではなく、何が組織の正しい権限かである。自らの機能ゆえにいかなる影響を社会に与えるかである。

社会への影響を最小限にする

組織は、自らの使命を果たすうえで、社会に何らかの影響すなわちインパクトを与える。組織は、どこかに立地する。立地先のコミュニティと自然環境に何らかの影響を与える。組織は人を雇用する。したがって、人に力を行使する。これらのインパクトは不可避である。さもなければ、企業は財とサービスを供給できず、学校は教育をできず、研究所は新しい知識を得られず、市は交通を円滑化できない。だがそれらの影響を与えることは、組織の機能そのものではない。機能を果たすための活動に付随するにすぎない。それらの影響は文字どおりの必要悪である。
組織が人間の力なしに目的とする成果を上げられるのであれば、人間に力を行使することが許されるはずがない。事実、まともなマネジメントは、人間抜きに仕事ができればありがたいと思っている。人間は面倒な存在である。誰も統治などしたくない。仕事をするうえで必要不可欠なだけである。

組織の責任

第一の原則は、スタッフへの影響を可能な限り抑えることである。同じことは、組織が影響を与える他のあらゆるものについていえる。社会やコミュニティに対する影響は干渉である。それが許されるのは、ごくかぎられた場合だけである。特にスタッフに忠誠を求めることは許しがたいことであり、正当性を欠く。組織とそのスタッフとの関係は契約上のものであって、あらゆる契約のなかでもっとも狭義に解釈すべきである。このことは、組織とスタッフの間に、愛情、感謝、友情、敬意、信頼があってはならないということではない。それらは価値あるものである。だが、いずれも付随的であって、勝ち取るべきものである。
第二の原則は、さらに重要なこととして、自らのもたらす影響を事前に知り、予防することである。先を見て自らのもたらす問題を検討しておくことは組織の責任であり、好ましからざる副産物を防ぐことは組織の社会的責任である。組織自らの利益のためでもある。好ましからざる影響を自らが防がなければ、問題のほうからやってくる。法律、規制、干渉がもたらされる。社会への害は事件となる。

社会のニーズを機会とする

組織は、自らが社会にもたらす影響についての対策を含め、社会のニーズや要求の満足を自らの機会としてとらえることが理想である。組織は本来の意味で起業家でなければならない。生産性の意味は組織によって違う。当然、成果の測定の仕方も違う。しかし、あらゆる組織が組織としての共通の責任をもつ。社会のニーズや要求を満たすことを自らの業績に転換することこそ、企業にとっての倫理的責任である。一流の人材を育てなければならないという社会的なニーズも、企業にとっては起業家精神を発揮する機会である。

100 年前は、教育問題、住宅問題を事業に転化することがあった、それらのニーズは電力、電話、新聞、書籍、デパート、都市交通をもたらしたそのころの機会。すべてがビジョンと起業家精神を必要とした、新技術とイノベーションを必要とした。いずれも、規模の力によって満たすべき個人ニーズに応える。それらのニーズが満たされたのは、社会的責任としたからではなく、機会としたからだった。言い換えるならば、まさに機会を求めることが組織としての責任であり倫理である。とはいえ、組織が自らの強みでない領域にある問題に手を出すことは、社会的に責任ある行動とはならない。自らの仕事に集中することによって社会のニーズを満たすとき、初めて社会的責任ある行動となる。社会のニーズを自らの業績に転換したとき、もっとも責任ある行動をとったことになる。そもそも社会の問題に敏感であることは、組織そのものの利益である。

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